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ケンコーコム、日本外国特派員協会での会見を聞いてきました

Genri Goto, CEO of Kenko.com, speech to FCCJ

健康食品、医薬品のオンライン販売で有名なケンコーコムの後藤さんのランチョンセッションが日本外国特派員協会(FCCJ)でありました。News2uではケンコーコムさんからのご依頼で Ustream での中継や記録用ビデオ録りなどを受けていて、その御縁でこの問題に興味のありそうなブロガーさんを紹介してほしい、というお話があったのですが、あいにく、わたしのほうからお声がけしたみなさんの都合が合わず、せっかくなので、自分で直接聞いてこようと、相手がお客さんにもかかわらずノコノコでかけてレポートすることにしました。

で、肝心の会見の内容ですが、要約すると以下のような感じです。っていうか、要約できないので、かなりカバーしてしまいました。

われわれは日本の会社だ。日本人が日本で設立した会社だ。ずっと消費者の安全を守ってビジネスをしてきた。なのに、政府はわれわれに出ていけといわんばかりだ。だから、裁判で訴えた。

単にアスピリンをインターネットで売れるようになるかどうかの問題ではない。3月30日にでる判決はこれからの日本がどこへ向かうのかの「テストケース」だ。

いわゆる「OTC 」北米やヨーロッパでは10年以上もネットで販売されていて問題がない。日本でも改正される前の薬事法ではネット販売は規制されていなかった。

2004年、1960年に制定された薬事法の改正にあたり、厚生労働省は審議会を設置したが、そこにはオンラインストアはいなかった。2005年の報告ではオンラインストアの制限はなかった。

2006年、改正薬事法が国会を通過したが、OTCのオンライン販売は規制されていなかった。そして施行までに省令を決めるところで「トリック」が始まった。

2008年2月、省令のための委員会を作ったが、ここでもオンラインストアは含まれていなかった。しかし、チェーンドラッグストア協会はメンバーに加えた。それだけではない。チェーンドラッグストア協会に法令を書くことを許した。これは秘密でもなんでもない。彼らが自慢しているのだから。

彼らは消費者の代表でもなんでもない。6280億円市場のOTC市場に競合が入ってこないようにしたいチェーンストアの代表だ。まるで、狐に鶏を守るルールを聞くようなものだ。そう、彼らは狐のように賢い。OTC はコンビニエンスストアに開放されたようにみせかけた。新聞でもそのように報道された。だた、実際はコンビニで売ることはとても難しい。

法律では、第一種の薬品には告知を義務付けた。しかし、省令ではすべての薬品に対面販売を義務付けた。なんと巧妙な。

これを根拠にオンライン販売は対面でないので安全でないとクレームがついた。そして2008年12月、読売新聞に19歳の少年が睡眠薬で自殺を企てたという記事がでた。

この少年は24箱の睡眠薬をオンラインストアから購入したことを根拠に、オンラインでの販売は危険だといっている。しかし、この記事では、この少年が2軒の普通の薬局からさらに6箱を購入していることにはふれていない。確認していないが、おそらくチェーンドラッグストアだろう。

安全について考えてみよう。銀座にいけば、小一時間ほどで6軒のチェーンドラッグストアをみつけられるだろう。販売記録など残していない。次々に購入することもできるし、万が一、薬に問題があったとしても、誰に販売したのかわからないし、購入した人に連絡することもできない。対面販売で聞かれるのは「ポイントカードはお持ちですか?」くらいのものだ。オンラインのほうがずっと安全だ。

しかし、今日の問題は安全の話ではない。癒着(Collusion)だ。官僚と規制対象の企業との癒着だ。みかえりは? 天下りだと思う。

対面販売をおしつければ、輸入できないいいわけにもなる。コンビニにも第二種まで開放されたというが、実際のところ難しくできている。オンラインにいたっては第三種のみに規制してビジネスできなくしてしまった。

こんなことは国会を通過した法律に書いていない。消費者を守ることにもなっていない。透明でも公平でもない。選挙で選ばれていない公務員が密室で決定している。官僚が友人をサポートするために決めたのだ。もっとショックなことはそれを隠そうともしないことだ。なぜ?

それは日本のビジネスではそれが当たり前のことだからだ。多くの日本人はしかたがないとあきらめてしまうからだ。たぶん、わたしはガンコなんだろう。だから我々の権利を犯す官僚の圧力に反対する。

3月30日に判決がでる。裁判所は我々が求めている判決を出すだろう。私は日本の裁判所を信頼している。彼らは官僚や政治家と違って法の秩序を守っている。しかし、もし、敗訴したときにはとてもがっかりするだろう。

日本の会社として、日本を拠点にアジアで一番の企業になることを夢にしてきた。アジアの消費者に日本からより高い水準でサービスしたい。日本の製造業にグローバルのマーケットを切り開いていきたい。われわれは、夢を失っても死にはしない。メイドインジャパンの夢のかわりにシンガポールを拠点に成長を目指すだろう。

これは私達の欲するところではない。もし、そんなことになれば、今後、日本の現状に挑戦するあらゆる新しいビジネスにも起こるだろう。日本は変化を拒否することで、子供たちを窒息死させてしまう。私にはそんなことは受け入れられない。それが今日いいたかったことだ。

厚生労働省を取材するあらゆる記者にこの話をもっていった。記者を見つけるのは簡単だ。ある一つの記者クラブに属しているからだ。不幸なことに、だれもこの話を取り上げなかった。おかしくないか? 偶然の一致にしては奇妙ではないか?

今日、FCCJ でお話しする機会をいただき大変感謝している。この話をプロフェッショナルであるみなさんの判断におまかせしたい。みなさんがこの話を世界に、日本の株式の30%以上を保有する海外の投資家に伝えることを期待する。

ありがとう。

ケンコーコムの後藤さんの気迫あふれるスピーチは ustream で見ることができます。
Ustream - Kenko.com CEO Genri Goto speech to FCCJ

そして Twitter での反応。
ケンコーコム 日本外国特派員協会 会見中継まとめ

スピーチでは、この規制について官僚との癒着と断言していました。法律の運営について、子細を省令で補うのはよいとしても、法律を越えた恣意的な規制を行うのは、権利を越えているものですし、その根拠となる審議会や委員会自体も人選や運営が不透明なものであればなおさらです。

この規制、安全という点を考えても問題だと思います。以前にも書きましたが、未来を作っていくためには、新しいことへの挑戦が不可欠です。ビジネスモデルとしても、技術にしても、新しいやりかたに挑戦し、イノベーションを興してこそ、成長を続けられるのです。安全の基準を明確に、安全を確保するために手段をもって縛るのではなく、安全を満しているかどうか、それを基準にすることが重要です。

日本人の品質へのこだわりは、健全にやれば世界で一番の品質をもった商品というブランドになるのですが、今回のような規制では、無駄で理不尽な参入障壁にしかなりません。オープンで健全な競争社会を維持することが重要です。

新しいことへの挑戦ができない社会には未来はないと思います。最近、海外に移住する人の話を良く耳にするようになってきました。わたし自身は、インターネットがあればどこに住んでいても一緒じゃないかと思って東京を拠点に仕事をしていますが、それも自由でオープンで透明な社会があってこそだと思います。

そういう意味でも、今回の判決、しっかりと見守りたいと思います。

Kenko.com Press Release: Our Struggle to Ensure Fair Play in Japan's OTC Pharma Market