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シックス・アパートの SAWS の背景

ワールドビジネスサテライト(WBS)のテレワーク、リモートワークの特集 でシックス・アパート・ワーキングスタイル (SAWS) の働き方を取り上げてもらいました。スタッフ全員がリモートワークが可能であるとか、フリーアドレスとか、オフィスを小さくしたとか、いろいろ制度面の話はあると思うのですが、どうして、こういう制度を導入しているか、というところについて、創った側の立場から、ちょっと書いてみたいと思います。

シックス・アパートは、Movable Type をはじめとして、ソフトウェアやサービスを創る会社です。ネットとの親和性は比較的高く、SAWS を導入する以前からオフィス、リモートどちらでも働ける体制がほぼ整っていました。プロダクトは Github のレポジトリに、サーバ群は AWS や IDCフロンティアなどのクラウドサービス、社内コミュニケーションは、ブログや Wiki や Slack 、もちろんメールなどを使っていました。開発環境やオフィス環境に安全にリモートアクセスできるよう、VPN などの仕組みも整えています。このような仕組みでお互いの仕事の内容が、基本的に可視化されていて共有されるようになっています。これらすべての基盤の上に、働く場所を「自由」にする方向に制度をかえました。自由とは文字通りの意味で、オフィスでもよいし、家でもコワーキングスペースなど、どこでもいいということです。原資はオフィスの家賃です。以前は、東京の赤坂に100坪程度で最大50-60人くらい収容できるオフィスを用意していましたが、EBO を契機に解約しました。その家賃が浮いた分を元手に、スタッフにリモートワーク手当と称して、自分で自由に働くための環境を整えたりするために必要な分を支給しています。通勤費は定期代の支給こそなくしましたが、オフィスへの交通費は実費精算にして支給しています。

オフィスを維持したのは、全員がリモートを選択することはないだろう、というのが大きいです。また、会社をやっている方ならわかるかと思いますが、10年以上の歴史のある会社には、なにかと「モノ」がありまして、そのための最低限のスペースも兼ねています。

制度を整える上で一番気をつかったのは、生産性の妨げになるようなルールはなるべく作らないようにすることでした。なので、働く場所や時間などの申請は最小限になるようにしています。もちろん、労働基準法とかいろいろありますので、完全に無くしてしまうことは不可能なのですが、働きたいと思ったときに、邪魔にならない、後押しするようなルールにしようと考えました。このため、サボリなどいわゆる不正を防止したり、働いているかいないか監視をしたり、といったことはしないようにしました。会社、スタッフ、どちらにとっても、コストにしかなりません。ルールを作らないで、信じることにしました。シックス・アパートは、もともとベンチャー企業でしたが、EBO を契機にスタッフの大半が会社の株式を保有するようになりました。いわば自分の会社ですから、悪いことをすれば、自分にとっても損失になりますし。信頼するほうが合理的です。

また、生産性の向上と良くいわれますが、重視したのは働く側、スタッフひとりひとりの生産性です。より短い時間で大きなアウトプットが出せる、というよりも、手取りが増えることが重要かと思いました。労働時間あたりの賃金が生産性ですよね。通勤時間が減り、リモートワーク手当の支給で、分子、分母の両方を良くしてみました。アウトプットが増えるのは成果です。これは今後、スタッフの評価に反映させていく予定です。

よく、EBO したからとか、小さい会社だからといわれますが、仕事の可視化と信頼に基くルールのほうが重要です。たまたまソフトウェアの会社であったことは、有利だったかな、と思いますが、合理的な判断の結果、リモートワークを含めた自由な働き方、SAWS を実施していると思っていただければ幸いです。

この体制になって一年ちょっと、成果は徐々にですが出来てきました。もうすぐ、Movable Type 7 のお披露目の予定ですので、楽しみにお待ちください。