dh memoranda

徒然なるままに日暮らしブログに向かいて...

「そんなんじゃクチコミしないよ。」を読みました

いまさらですが「そんなんじゃクチコミしないよ。」読了しました。著者の河野さんとは、シックス・アパートで一緒に働いていましたが、献本でいただいたものではなく、近所の本屋さんで自分で購入したものですので、決していわゆる Pay Per Post でも、献本+レビューによるクチコミ効果を狙ったものでもありませんので、そこんところよろしくです。って、なんでそんなことまで書かないといけないんだろう...。

ともかく、以下、感想を。ネタバレ注意です。

この本における筆者の基本的な主張は「TV はあいかわらず影響力がある」「大きなクチコミをおこすには、大きな影響力をもつメディアを利用したほうがよい」「ネットの影響は喧伝されているほど大きくない」「ブログを含めたネットは費用対効果ではTVやほかのメディアと大きな違いがない」という感じだと思います。まあ、ネットの影響は大きくない、というのは程度問題だという気がしないでもありませんが、インターネットは魔法の杖ではありません、という意味では同感です。

ひとつ気になったのは、じゃあどうして「みんなネットに注目するのか、しているのか」という点について、この本ではカバーできていないような気がしました。

わたしがインターネットに注目してずっとこだわっているのは、いわゆるロングテールをカバーできるからです。小さい出来事、そもそも顧客が限定されているニッチな商品などは、インターネット出現前までは、そもそも必要とする人のところに情報を届けるのに苦労がありました。どこに必要とする人がわからないので、大きなリーチのあるメディアを利用したいけれど、実際には対象者が非常に少ないので効率が非常にわるい。で、解決策として専門性の高いメディアが存在し、情報を届けたい人、情報を必要とする人、それぞれに当時としてはリーズナブルなコストで情報を届ける手段を提供していました。しかし、この専門性の高いメディアを見つけるのもそれなりにコストのかかるものでした。

インターネットの登場、特に最近の検索サービスの性能向上は、情報を流通したり、発見したりするコストを劇的に削減し、情報流通のありかたを大きく変革しつつあります。ひとつには、情報流通コストの削減が損益分岐点を低く抑え、これまでだと流通させ難かったものや、そもそも存在自体を知られていなかったものに触れる機会を増大させました。マーケティングやPRの手法についても、コスト構造の変換に応じてさまざまに変化しているところだとおもいます。クチコミに限らずいろいろなやりかたが、以前から存在していましたが、この変化のなかで、より有効になったもの、以前より費用対効果が劣るようになったものなどいろいろ出てきているのではないでしょうか。

この変化はすでに起きてしまっていますが、インターネット自体の進化が止っていない現在、わたしたちはなおも変化の只中にいます。変化しているときには、なにが有効でなに有効でないのか、常に手探りで進んでいく必要があるわけで、様々な試みをし、効果があった、効果がなかったということを積みあげて、新しいやりかたに辿りつかなければならないでしょう。正直なところ答えはありませんので、それが面白いわけだし、答えがあると信じているわたしは、ずっと注目して試行錯誤をつづけているわけですが。

そういう意味で、この本は現在を切りとって、いまわたしたちの置かれている状況をそれなりに説明していると思いました。河野さんはわかっている人ですので、本当はもっと新しい提案を期待したいんですが、それは1480円の本には期待しすぎでしょうか。きっと、これから見せてくれることでしょう :-)。はい。