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ベンチャー企業に新卒入社という選択はおすすめしない

わたしがお世話になっていますニューズ・ツー・ユーの社長、神原弥奈子がイー・ウーマンのサーベイに登場しています。お題は「ベンチャー企業に新卒入社という選択、『有り』だと思う?」です。4日目の現在「有り」のほうが票を伸ばしているようです。



イー・ウーマン サーベイ 「ベンチャー企業に新卒入社という選択、『有り』だと思う?」


ニューズ・ツー・ユーもいわゆるベンチャー企業で、わたしも、ベンチャー企業とよばれる企業を渡り歩いているのですが、その経験を踏まえてみて、あえて「おすすめしない」理由を書いてみたいと思います。

ベンチャー企業はどうしてベンチャー企業なのか、いろいろな考え方があると思いますが、わたしは、ベンチャーキャピタルなどからリスクマネーを取り込むことで普通ではとれないリスクをとっているか、イノベーションによる大きなリターンの可能性があるかどうかがポイントだと思います。ここでいうリスクマネーは、失敗も覚悟の上でリターンに期待して投資されたお金であるという意味です。

ベンチャーキャピタルが覚悟している失敗とはどのようなものでしょうか。日本では数千万円、場合によっては億円単位の金額を投資するからには、あからさまにおかしいビジネスに投資できるわけがありません。投資するまえに、成功するかどうか、成功したらどれくらいのリターンがあるのかを十分に精査した上で、投資をします。企業がどんな事業に挑むにせよ、その事業にはどれくらい可能性があるのか、そこの見極めに対する失敗を覚悟しています。

しかし、精査するとはいえ、なんといっても、新しい技術、新しい事業です。成功することがわかっていたら自分でやるよ、って皆思うわけで、基本的には、わからないものに投資することになります。わからないけど、これくらいの確率で成功するだろう、成功したらこれくらいリターンがあるだろう、ここの見極めがベンチャーキャピタルの腕の見せ所なわけです。もちろん、投資したあとほったらかしにするだけでなく、成功させるために、しっかり手伝うのも、リターンを最大化するために必要なのですけどね。

で、そんなリスクをとっている会社なので、事業を成功させるために必要でないことをする余裕はないんです。投資を受けたほうとしても成功させるために必要な人材の確保は必要ですが、普通は新人を獲得して、一人前になるまで成長させるのを待っている時間の余裕はないでしょう。事業がうまくいくかどうか、新人よりはプロに任せたいと思うでしょうし、経験のないフレッシュマンがチャレンジするから上手くいくんです、なんて事業プランだったら投資したいとは思わないなあ。

もちろん、ベンチャー企業もいずれ成長が鈍化し、安定的に成長させる事業運営が必要になります。そうすると、会社をささえる資金も、ベンチャーキャピタルなどの高い成長率を前提とした資金から、そうでない資金に移行し、新人を獲得して十分に投資をして長期的な視点で一緒に成長するフェーズになります。でも、このフェーズはもうベンチャー企業とは呼ばないですね。

社員としてのベンチャー企業でのチャレンジは、自分のもっている力をきちんと発揮して、会社の成功に貢献することだと思います。会社が負っている高い期待値の中で、自分がどれだけのアウトプットができるのか。ベンチャー企業でこそ学べることもたくさんありますが、会社が学ぶための環境を用意してくれるなんて期待はしないことです。ベンチャー企業に飛び込む人は、まず高いアウトプットを求められる覚悟をしましょう。

しかし、自分はどうなのか、と問われると、理想と現実は違うというしか。ベンチャーキャピタルからの資金を預かっている以上、高い成長を実現することを期待されていますし、実際にそのためにみんなでがんばっていますが、日本の場合、アウトプットに自信のある人なんて、なかなかベンチャー企業に参加したりしませんし、そんな人だけで会社を作るなんてなかなかというか、まずできません。厳しい環境のなか、一緒に働いてくれることだけでも感謝しなければならないですし、社員全員の成長のための投資も事業の成長のための投資と同じくらい重要です。

このあたりも日本のベンチャーの課題なんだろうなあ、と思う今日このごろです。