理系白書
買った本の紹介ばっかりしていますが、こんどは「理系白書」です。
毎日新聞の連載をまとめたこの本のサブタイトルは「この国を静かに支える人たち」とあるように、たまに注目されることもあるけど、普段はなにやっているかわからない(と思われている?) 理系の実体について、取材などをもとに明らかにしようとしています。
「理系白書」なんて書いているので、たぶん理系びいきに書かれており、自称「理系」なわたしには、おおむね好意的に読むことができました。大学・大学院の閉鎖性、女性にとっての理系社会の難しさなど、丁寧に書かれています。理系/文系の出世や給料での差などにもふれています。
理系/文系の対立を煽るような内容になっているわけではないのですが、先日「ココログ」ではじまった「週刊 木村 剛」の青色ダイオードの記事をみても思うように、技術の専門性が進みすぎ、理系の世界がますます、理解されにくくなってきているように感じます。
週刊! 木村剛: セールスは技術開発より難しい ただし、「発明者の貢献度は50%」と言われると、逆にこれも本当かいなという疑念が浮かばないわけでもない。そもそも「技術」だけでは儲からないからである。モノを売るということは、技術だけではなく、マーケティングやロジスティクスなどの諸々の企業行動がすべて噛み合って、初めて成功するものだからだ。
この記事に対してのトラックバックを見てみますと
Demilog: セールスは技術開発より難しい、とは言えないと思うなあ 今回の中村さんの判決は非常に特殊な例で、会社のバックアップ体制が多くのライバル企業に比べて貧弱な中、お偉いさんから止めるように言われるなど足を引っ張られる状況下で一人で頑張って、製品化まで持って行ったというものです。そして出来上がった青色LEDは、どこかの学会などで中村さんが「出来ました」と発表すればなんの広告も打たなくても、営業さんが寝ていても、世界中から引く手あまたの状態になってしまう製品でした。
中村さんの一件が特殊、というのはまったくそのとおりだと思います。理系の人からみれば常識ともいえる青色LEDについての市場価値と当時の状況についても、また、当時新聞の一面を飾った画期的なニュースであったにもかかわらず、あまり理解されていなかったのでしょうか。中村さんは、青色LEDを発明したわけでなく、あるにはあったのだが、暗かったり、すぐダメになったりしていた状態から、実用レベルにひきあげるための製造方法を考え、装置を作成したのです。世紀の発明というわけではないかもしれませんが、世界中のエンジニアが狙っていた分野における技術革新といえども、一般の人からみた評価は、総じて低いのかもしれません。
技術の専門性が進んだ結果、理系の人は専門以外を学ぶ余裕がなくなり、文系の人は技術の詳細は理解不能、そんな感じなんでしょうか。しかし、企業活動においても技術革新のインパクトは増大し、そこに注目して事業・研究に投資があつまるシリコンバレー・ベンチャーなんてビジネスモデルまで登場してかなり経ちますが、日本では...という状況が続くようではこまったものです。技術をわかりやすく説明し、研究資金を集め、市場を開拓していく...。そういう意味では、理系の人が経営やマーケティング分野にもっと進出すればいいのでしょうけど、画期的な成果を目指して研究しながら、経営やマーケティングの知識も...やっぱり大変かな...。
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